易の八面体サイコロ|黒が外卦(上卦)、赤が内卦(下卦)に納得できる理由とは?《実例紹介》



易占いの方法

易占いをする方法は、筮竹、コイン、サイコロ(ダイス)など様々な方法があります。

本格的に易を立てる場合は筮竹が用いられますが、筮竹がない時はお財布にある硬貨などを使って占うこともできます。

六十四卦をカードにしたイーチンタロットも人気がありますが、卦だけでなく爻まで一度に得たい場合には、易用の八面体サイコロを使用するのがおすすめです。

八卦(乾=天、兌=沢、離=火、震=雷、巽=風、坎=水、艮=山、坤=地)を覚えれば、易用の八面体サイコロを使用して手軽に易占いをすることができます。


易の八面体サイコロの上下

一般的な易サイコロは、黒色で八卦が印字されている八面体のサイコロと赤色で八卦が印字されている八面体のサイコロ、そして爻を表す数字が印字されている六面体のサイコロの3個セットになっているものが多いと思います。

そこで、この黒色と赤色の2種類の八面体のサイコロに対して、一体どちらを外卦(上卦)でどちらを内卦(下卦)にすれば良いのかと悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私も昔若干悩んだ記憶がありますが、易を始めた頃に読んでいた本の著者の方のやり方に従って、黒を外卦、赤を内卦と決めることができたように思います。


最近、なんとなく予備の易サイコロを購入しておこうと思い立ちまして、Amazonで調べていたら以下のような「上卦用紅色・下卦用黒色」との記載を幾つか見かけました。

  • 【商品内容】サイコロ:八面体2個(上卦用紅色・下卦用黒色)・六面体1個(動爻用)
  • 【商品詳細】セット内容:易占い サイコロ 3個セット,3個セット サイコロ 八面体 六面体 占い用,八面体×2((上卦用紅色・下卦用黒色)、六面体×1(動爻用)
  • 【セット内容】八面体x2個(上卦用紅色・下卦用黒色)、六面体x1個(動爻用)サイコロ収納ケースx1

これを見て、易サイコロの黒と赤の上下に悩んでいる人がいるのではないかと思ったので、この記事を書いています。

Yahoo!知恵袋においても、過去に易サイコロの上下についての質問があったようです。

現在も、YouTubeで発信されている方や現役の占い師さんによっても黒色と赤色のサイコロの上下の扱いは各々異なっています。


これについては、どちらが正解ということではなく、ご自分が納得できる方を選んでいただければと思いますが、私は黒=外卦(上卦)、赤=内卦(下卦)で納得しております。

今回は、その理由を3つご紹介したいと思います。

逆の場合を否定しているわけではありませんので、どうかご了承くださいますようお願いいたします。

これから易を始めたい方やまだ始めたばかりで上下をどうしようか悩んでいる方の参考になれば幸いです。


黒が上卦、赤が下卦に納得できる理由①

黒色は水、赤色は火を表します。

水は下降するものであり、火は上昇するものです。

上に黒すなわち水があり、下に赤すなわち火があれば、上下の気は混じり合い調和します。

黒色のサイコロを上卦にし、赤色のサイコロを下卦にする理由は「調和を表すから」ということになります。


その黒色のサイコロを水を表す「坎」を表にし、赤色のサイコロを火を表す「離」を表にすると、「水火既済」という卦が現れます。

水火既済は、完成や成就など「定まっている」ことを表す卦です。

すべての爻が正しい位置を得ており、すべての爻が正しく応じ合っているので安定しています。

そのため、このように正しく定まっている状態から占いを始めるのが最もしっくりくるとも言えるかもしれません。


ちなみに、そのままの状態で上下を逆にすると、火水未済という卦になります。

火水未済は、「未完成、未だ成らず」を表す卦です。

すべての爻が正しい位置を得ておらず、きれいにボタンを掛け違えているような状態です。

思い違いがあることなどを表します。

しかし、各爻は不正ながらもすべて応じ合っているので、手がかりがあることを表します。


それぞれの卦辞は、以下の通りです。

水火既済の卦辞

『既済は、小し亨る。貞しきに利あり。初めは吉にして終りには乱る。』

火水未済の卦辞

『未済は、亨る。小狐汔んど済る。其の尾を濡らす。利するところなし。』


周易では、全体的にみると水火既済(完成)よりも火水未済(未完成)の方が可能性を感じる卦なので、個人的には火水未済(未完成)の方が好きです。


黒が上卦、赤が下卦に納得できる理由②

易占いをした時は、結果をできるだけメモに残しておくことをおすすめします。

私のメモに、以下のような問いをしたことが残っていました。

「なぜ、易は当たるのか」教えていただけますか?と。

この問いで得た卦は、「水火既済の二爻」になります。

易が当たる理由を、水火既済の二爻から読み取ることはできるでしょうか。


まず、水火既済の二爻は「陰位に陰で居る正の中庸爻」です。

完全に整った卦の内卦の離(火)は知恵や知識を表し、二爻は中庸を得て明の主たる爻、よって文明の徳がある。

易が当たる理由は、「完全な明智を持った中庸の徳のある人物が作ったものだから」、かもしれませんね。

応じている五爻も中庸を得ていますが、五爻は高位にありながらもこの卦においてはあまりあてになりません。

水火既済の卦においては、二爻が最も優れた知恵を持っています。


ちなみに、離(火)は知恵や知識、知性のほかに芸術性も意味します。

芸術性というのは、完全に整っているよりも未完成の中にあるように思います。

易の六十四卦は、未完成を表す火水未済が一番最後の64番目に配置されています。

これは、自然が循環しているように六十四卦も永遠に発展しながら次の新たな卦へと続いていくことを表しています。

「永久の未完成これ完成である」という宮沢賢治の言葉がありますが、「人間は永久に未完成でありながらも正しく生きようとし続けるものであり、そうすることこそが正しい道である」ということにも通じるように思います。


また、易は卦辞と爻辞また各伝(十翼)を読むほか、八卦の象意や爻のあり方などを見て、問う人自らが直感でメッセージを選び取ることができるものです。

だからこそ、易の解釈は無限であり、どのように解釈するかは問う人に任されています。

得た卦爻を解釈するためには様々な知識を必要としますが、「知識が身につけば身につくほど、易は当たると言わざるを得なくなる」ということも意味しているのかもしれません。


黒が上卦、赤が下卦に納得できる理由③

「なぜ、易は当たるのか」の問いからしばらくして、以下のような問いをしたメモが残っていました。

「人は、賢者である時どのような人物か」教えていただけますか?と。

一体なんのことかと思うかもしれませんが、研究のために占いをやっていると、時々こんな感じのわけのわからない問いをしていることがあります。

易は、本来は自分自身の現状把握と今すべき行動の指針を得るために用いるべきものです。

なので、あまり変な質問はすべきではありませんし、賢者のあり方も当然一つではないことは分かっているのですが…

人は、時に賢者であり、時に愚者になるものです。

誰もが日々賢者になったり愚者になったりしますが、「人は、賢者である時どのような人物か」という問いに、易はどのように答えてくれるのか知りたかったのです。

教えていただけますか?と言うと、いいですよっていう感じがあったので、サイコロを振りましたら、「なぜ、易は当たるのか」の時と同様に水火既済の二爻を得ました。


水火既済の二爻は上記の通り、「陰位に陰で居る正の中庸爻」です。

水火既済の二爻の人物像は、完全に整った卦の内卦の離(火)の中庸爻なので、確かに知性的な賢者を表しています。

水火既済の卦においては、陽で中庸を得ている五爻の徳でさえも、この陰の二爻に及びません。

ただ、その五爻が事業が既に成った後で気が緩んでいてなかなか探し迎えてくれないという憂いはあるのですが、やがては機会を得て世に出るであろう野にある賢者です。

爻辞は、以下の通りです。

『婦その茀を喪う。逐うなかれ七日にして得ん。』


ちなみに、サイコロの上下を逆にした場合の火水未済の二爻の人物像も、文徳の明らかな君主である五爻に頼りにされている賢者です。

爻辞は、以下の通り。

『其の輪を曳く、貞しくして吉。』

陽爻で剛ながらも柔位に居て、恭順で中庸の徳を備えています。

艱難の中にあっても柔軟性を持ち、妄進することなく自己を抑制している賢者です。

このように、易経にはあらゆる状況における様々な賢者のあり方が示されています。


ストア派のセネカは、「完全な思慮は完全な徳と区別できない」と言いました。

これは、「完全に思慮深くあるならば、完全な徳を備えた人物と同じように行動するだろう」ということです。

どんな状況にあっても思慮深さが根底にある人物像の象徴として、水火既済の二爻が示されたのかもしれません。


まとめ

今回は、易の八面体サイコロは、黒=外卦(上卦)、赤=内卦(下卦)とすることに私自身が納得できている理由を3つご紹介しました。

つまるところ、1つ目の理由があって2つ目と3つ目の実例を紹介してみようと思ったわけですが、いかがだったでしょうか。

易の八面体サイコロで水火既済の卦を得た時に、坎(水)が黒色、離(火)が赤色で表示されているとぴったりな感じがしませんか?

また、「なぜ、易は当たるのか」と「人は、賢者である時どのような人物か」の問いに対する答えが、384爻ある中で同じ水火既済の二爻というのも何かあるような気がしました。

ただ、この実例をもって完全に納得できるとも言い切れなくなる程に、対極に位置する火水未済の存在感も浮き彫りになったと思います。

易は、対極の性質との相互作用からなる絶え間ない変化の状態を表しています。

もしサイコロの上下を逆に設定していたとしても、納得のできる答えを得られていたならそれで良かったと思いますし、問いに対する答えはサイコロの色に関係なくやはり同じになっていたのかもしれません。

こればかりは分かりませんが、皆さんはどのようにお考えになりますか。


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