易占い|64卦384爻|17「沢雷随」と各爻のメッセージ《人生の指針》
沢雷随のメッセージ
沢雷随
䷐
易占いは、得た卦の卦辞と爻辞また各伝を読むほか、上下の八卦の象意や爻のあり方などをみて、問う人が直感でメッセージを選び取ることができるものです。
以下、周易における沢雷随と各爻のメッセージを簡単にまとめました。
少しでも参考にしていただける部分がありましたら幸いです。
- 外卦(上卦)☱ 兌(沢)
- 内卦(下卦)☳ 震(雷)
沢雷随は、追随、従うことを表す卦です。
震(雷)は「動く」、兌(沢)は「喜ぶ」という意味があります。
沢雷随は、自分が従う動きを取ることによって、相手が喜ぶことを表します。
従うというと、主体性がなく消極的な感じがしますが、自らの意志で喜んで相手に従い、それによって相手も喜ぶならば、お互いに良い結果を得られる時です。
八卦は六親(家族)を表し、震(雷)は「長男」、兌(沢)は「三女」を象徴します。
雷の上に沢があるので、長男が三女を肩に乗せて、二人で肩車を楽しんでいる姿をイメージすることができます。
この場合、長男から申し出て三女が喜んでいる姿、または三女が上手に甘えて長男がそれに快く応じているような、微笑ましい状況がイメージできます。
このように、自然な流れに沿った柔軟で臨機応変な従い方は、理想的な従う道と言えるでしょう。
易占いにおける大成卦(六十四卦)は、内卦(下卦)は自分、外卦(上卦)は相手を表します。
沢雷随の初爻は、震(雷)の主爻にあたり、自ら動くことによって相手を喜ばす主体となります。
沢雷随は、二爻と五爻だけが正しく応じ合っている卦です。
五爻は、陽で中庸を得ており、同じく中庸を得ている陰の二爻に忠実であろうとしています。
この善き者との約束を守って結束すれば、結果が吉であることは言うまでもありません。
しかしながら、二爻は心弱く、五爻を待てずに初爻に従ってしまいそうになっています。
二爻の爻辞には『小子に係りて、丈夫を失う。』とあり、目の前の小利に釣られて本分を見失ってしまうことを表しています。
手軽で身近なものに安易に従えば、大切なものを失ったり、取り返しがつかなくなるかもしれません。
本来の道を忘れて、目先の安直なものに引っかかりやすい時なので、注意が必要です。
引っかかると言っても、騙されたというよりも、自らが安易な方を選びがちなことが表されているので、日頃からの心構えが大切です。
安易な行動によって大きなものを失うことほど惜しいことはないので、いつも大局観を忘れずにいたいものですね。
この卦爻から得られる教訓は、とても大切なので、常に心に留めておきましょう。
三爻は、有利な方に媚びて従おうとしています。
有力者に従えば、一時的な利益はあるかもしれませんが、動機が不正なので長く続けることはできないでしょう。
四爻は、実力がありながらも、敢えて上に従っています。
たとえ実力が相手を凌ぐほどであったとしても、立場上は従わざるを得ない時もあるものです。
しかし、あまりに威勢がいいと上から警戒されるので、誠実さを心がける必要があるでしょう。
また、実力が上に勝っていると考えるのは思い上がりかもしれません。
背伸びをせず立場をわきまえて、慎重に行動することが大切です。
上爻は、極端なほどに従っており、盲信しています。
しがみついて離れられなくなる程に従うのは盲従と言えます。
融通のきかない頑固な人となっているかもしれません。
然るべきものに従うならば、これほど固く結ばれるものはなく、誠の心を持って神仏を祀るのであれば、その心は通じるでしょう。
このように、沢雷随はさまざまな従い方やその動機が示されている卦です。
沢雷随の卦辞には「元亨利貞であれば、咎なし」とあります。
正しい人、正しいもの、正しいあり方に誠意を持って素直に従うと良い結果となる時です。
ということは、正しくないものに従えば、災いは起こり得るということを意味します。
沢雷随は、基本的には柔軟に他者についていくと良い時と判断されますが、正しいかどうかの判断というのは、なかなか難しいものですね。
誘いを受けた場合などに、易占いをして沢雷随の卦を得たからと言っても、必ずしもすべて他者に従うべきというわけではないので、とりあえず乗ってみようと安易に判断するのは早計です。
流れに身を任せて臨機応変に従うと良い時ではあるのですが、たとえ社会的に常識とされている事であったとしても、すべてが正しいこととは限らないのではないでしょうか。
信頼できる相手かどうか、喜ばせたい相手かどうかを見極めて従うことが大切です。
震(雷)は年配の男性、兌(沢)は若い女性とみることもでき、沢雷随は、「老いらくの恋」と言われることもある卦です。
男性が積極的に動けば女性は喜び、男性は女性を喜ばせることで自らも喜びます。
中正の徳ある者同士であれば、お互いを尊重し合って従い合うので、理想的な夫婦を表すと言えるでしょう。
しかしながら、時に男性は服従させることに喜びを感じ、女性も少なからず従属したいという欲求があるため、バランスが崩れると支配と服従の関係になってしまうかもしれません。
一歩譲ることも従うことなので、たとえ年の差があったとしても、バランスよくお互いに話を聞き合って、愛情を持って妥協し合うことで、お互いが喜ぶ理想的な関係となるでしょう。
沢雷随は、正しい動機によって従うことの大切さを教えてくれる卦です。
《各爻の要点とキーワード》
- 🟥自ら動いて従う、相手を喜ばす、引きずられて動く、相手の意見に従う、順応、服従
- 🟧安易に従う、目先の小利に釣られて本分を見失う、その場しのぎ、ひっかかる、安直
- 🟨有利な方に従う、不正な動機で利を得る、利に走る、権力におもねる、媚びる、保身
- 🟩君主を凌ぐ勢いだが立場上従う、威勢がいい、疑われる、警戒される、やり手、威圧
- 🟦実力者が良きものに応じる、忠実に従う、約束を守る、誓いを守る、忠誠心、人望
- 🟪従う極地、盲目的に従う、頑固にしがみつく、離れられない、融通がきかない、盲信
『随は、元いに亨る貞しきに利あり。咎なし。』
参考:易経|64卦384爻|17.沢雷随(たくらいずい)の卦辞と爻辞、読み方、変卦など
以下は、自分自身の現状と位を占って沢雷随の各爻を得た場合のメッセージになります。
他者の現状や過去の状況、また未来などを占った場合には、そのように変えて解釈してみてください。
基本的には、自分自身の現状把握と今すべき行動の指針を得るために易を用いることをおすすめします。
沢雷随の初爻
沢雷随の初爻は、陽位に陽で居る正の不及爻です。
『官渝ることあり。貞なれば吉。門を出でて交わるに功あり。』
🟥【現状を占って沢雷随の初爻を得た場合】
自ら動いて従う状態です。
人や状況に対して、従う行動を取ります。
自分が動くことによって、相手を喜ばすでしょう。
相手の意見に従うことで、自らが変化していくかもしれません。
正しい道に沿って従いましょう。
(□)
之卦または伏卦は、沢地萃です。
䷐→䷬
参考:易占い|64卦384爻|45「沢地萃」と各爻のメッセージ《人生の指針》
沢雷随の二爻
沢雷随の二爻は、陰位に陰で居る正の中庸爻です。
『小子に係りて、丈夫を失う。』
🟧【現状を占って沢雷随の二爻を得た場合】
目先の小利に釣られて、本分を見失う状態です。
目の前の利益に目が眩んで、ひっかかってしまいそうです。
大局を見誤って、その場しのぎなことをしてしまうかもしれません。
些細なことによって、大きな恩恵を失ってしまう時です。
本質を見極めて、長期的な視点に立つようにしましょう。
(△)
之卦または伏卦は、兌為沢です。
䷐→䷹
参考:易占い|64卦384爻|58「兌為沢」と各爻のメッセージ《人生の指針》
沢雷随の三爻
沢雷随の三爻は、陽位に陰で居る不正の過爻です。
『丈夫に係りて、小子を失う。随って求むるあれば得。貞に居るに利あり。』
🟨【現状を占って沢雷随の三爻を得た場合】
本分を見失って、追従している状態です。
有力者や有利な方に媚びています。
保身のために権力におもねているかもしれません。
それによって多少の利益はありますが、一時的であり長くは続かないでしょう。
惑わされずに私情を捨てて、正しい道に従いましょう。
(□)
之卦または伏卦は、沢火革です。
䷐→䷰
参考:易占い|64卦384爻|49「沢火革」と各爻のメッセージ《人生の指針》
沢雷随の四爻
沢雷随の四爻は、陰位に陽で居る不正の不及爻です。
『随って獲るあり。貞なれども凶。孚あって道に在り、以て明らかなれば、何の咎あらん。』
🟩【現状を占って沢雷随の四爻を得た場合】
立場上従うべきなので、従っている状態です。
実力が等しく引けを取らない相手に対して、従っています。
威勢がよいので、警戒されているかもしれません。
分をわきまえて相手を安心させる必要があります。
誠実さを心がけましょう。
(□)
之卦または伏卦は、水雷屯です。
䷐→䷂
参考:易占い|64卦384爻|3「水雷屯」と各爻のメッセージ《人生の指針》
沢雷随の五爻
沢雷随の五爻は、陽位に陽で居る正の中庸爻です。
『嘉に孚あり、吉なり。』
🟦【現状を占って沢雷随の五爻を得た場合】
相手に対して忠実に従おうとしている状態です。
約束や誓いをしっかりと守ろうとしています。
忠誠心を持って相手と結束すれば、良い結果となるでしょう。
信頼できる相手と相応じ合う時です。
誠実さを貫きましょう。
(◎)
之卦または伏卦は、震為雷です。
䷐→䷲
参考:易占い|64卦384爻|51「震為雷」と各爻のメッセージ《人生の指針》
沢雷随の上爻
沢雷随の上爻は、陰位に陰で居る正の過爻です。
『これを拘え係る。乃ち従ってこれを維ぐ。王用て西山に亨す。』
🟪【現状を占って沢雷随の上爻を得た場合】
離れられないほどに、従っている状態です。
こうでなければならないという思い込みがあるようです。
極端な信仰や信念にしがみついているかもしれません。
一度冷静になって振り返ってみましょう。
神社仏閣の参拝等では、感謝のみを伝えると良いでしょう。
(□)
之卦または伏卦は、天雷无妄です。
䷐→䷘
参考:易占い|64卦384爻|25「天雷无妄」と各爻のメッセージ《人生の指針》
参考文献:本田濟「易」、高田真治・後藤基巳訳「易経(上・下)」、水沢有「すべてがわかる384爻 易占い」、学研「東洋占術の本 -運命と未来を見通す秘術の大系」ほか
占いの吉凶について
上記のカッコ内には吉凶を記載しましたが、あくまでも目安として参考にしてください。
◎=大吉、◯=吉、□=半吉、△=凶、✕=大凶
易経は占いの書でもありますが、人生のあらゆる状況における指針となる書物です。
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